森と林と木と山の話(1)

今回から、このコラムでは子供たち(小学生)が読んでくれることを意識して、森林や樹木の初心者向けの解説記事を何回か書くことにしました。タイトルは「森と林と木と山の話」です。

森と林と木と山と

みなさん木は好きですか。また木がたくさん生えている森林に行くことはありますか。

木は樹木ともいいますね。樹木にはマツやスギの仲間ように、針のような葉っぱを持つ針葉樹(しんようじゅ)と、モミジの仲間やサクラの仲間のように広くて平べったい葉を持つ広葉樹(こうようじゅ)があります。


針葉樹(写真はクロマツ)


広葉樹(写真はカスミザクラ)

針葉樹の先祖は今から3億年ほども前に、また広葉樹の先祖はずっと新しくて、1億年ほど前に地球に出現しました。針葉樹は恐竜よりももっと古いトカゲのなかまの「は虫類(はちゅうるい)」が現れた時代に、また広葉樹は「恐竜(きょうりゅう)」が歩き回っていたときの地球に現れたのです。

森林という字は森と林からできています。

では、森とはなんでしょうか。また、林とはなんでしょうか。

どちらも木がたくさん生えているところですよね。でも、字の形を見ても、森の方が林よりもたくさん木がありそうです。日本では、お正月などの特別な日に神社にお参りしますね。多くの神社は、太くて高い木に囲まれた中にあります。このような「こんもり」と大きな木がたくさん集まっているところなので、「もり」とよんでいるのです。シャレみたいですね。

谷川を伝い、どんどん山奥(おく)に入っていきますと、おいしいトチもちを作るトチの実のなるトチノキ、種がナッツになるブナ、どんぐりの実るミズナラ、太さが2mにもなるスギなどの大木がこんもりと生えている場所に行くことができます。ここは自然の森です。


自然の森

このような森は天然林(天然の森林)や自然林(自然の森林)とよばれており、クマ、シカ、カモシカ、イノシシ、タヌキなど多くの動物たちも住んでいます。このように自然の森には多くの種類の植物や動物が生きており、ゆったりした生き物の世界がそこにあります。

では、林とはなんでしょうか。

林とは、森にあるような大きな木はなくて、もっと若くずっと細い木がたくさん生えている場所のことです。やがて大木になるトチノキでも、若くて細い木ばかりのときは、そこは森ではなくて林なのです。また人が植えたスギやヒノキが育っているような場所もまた、林とよんでいます。これが人工林です。


人工林

つまり木を人の手で「はやし」ている場所ですから、林なのでしょうね。みなさんが「森林」とはなんですか、と聞かれたら、このような森や林が広がっている場所をいっしょにして「森林」とよんでいるのですよ、と答えてくださいね。

町に住む人たちは、木がたくさん生えている場所ならどこでも「もり」とよぶことが多いですね。でも私のようにいなかに住んでいる人たちは、森林を「もり」ではなく「やま」とよんでいます。平らな場所でも、木がたくさん生えていれば、そこは「やま」なのです。また木を育てたり、木を切ったりして木材を作る林業は「やま仕事」であって、「もり仕事」ではないのです。

里山

昔話のももたろうは、おじいさんは山へ「しば」かりに、で始まりますね。「しば」は漢字で「柴」と書きます。ゴルフ場の芝生(しばふ)の芝(しば)ではありません。「しば」はご飯をたいたり、お風呂をわかしたりするときの「たき木」になる細い木のことです。昔はガスや電気はありませんので、町の人もいなかの人も、みんな「しば」を自分で取ってきたり、買ってきたりして、家で燃やしていたのです。毎日がキャンプみたいですね。

ももたろうのおじいさんが「しば」かりに行った家の近くの山は、里山(さとやま)といいます。


里山

里山には「しば」や炭にするためのナラの木が多く、また草がたくさん生えた場所も広がっていました。ナラの木はどんぐりをいっぱい落とすので、拾って団子にして食べたことでしょう。また草は刈って田んぼの肥料にしたり、牛や馬のエサにしたり、家の屋根をふくのに使ったりするため、大切に守られてきました。ももたろうのおじいさんは、こんな里山に生えている「しば」をかりに行ったのです。

山奥の大木がたくさんあるような森は、里山ではなくて「奥山(おくやま)」とよんでいます。奥山は、里山のように毎日行くようなところではなく、山の神様や、亡くなった祖先たちが住んでいる神聖な場所とも考えられていました。クマやシカなどを取る猟師(りょうし)、きこり、炭焼きなど、山で働く人たちにとっての山の神は、山のめぐみをくださる大事な神様でした。

「こぶとりじいさん」の話を知っていますか。ある日、おじいさんは山奥に入ってしまって帰れなくなり、木の穴の中で休みます。


大木の穴

すると夜おそくなって、おじいさんのかくれている穴の前に「おに」がたくさん集まってきて、お酒を飲んで大さわぎをする、というお話です。

昔の人は、おく山はいい神様ばかりでなく、悪い「おに」や「やまんば」も住む恐ろしい所とも考え、なるべく近づこうとはしませんでした。「やまんば」は山に住む「おに」のおばあさんですが、「もりんば」とはいいませんね。

一方、このようなおく山では、「木地師(きじし)」とよばれる木の食器などを作る人たちが住んでいました。木地師は、「ろくろ」という機械を使い、木のかたまりをくるくる回して「かんな」という刃物で削り、ご飯やみそ汁を食べるための丸いおわん、お盆などを作っていました。材料となるいい木が少なくなると、木地師は新しい場所に移動して、また食器などを作り始めるのです。


木地師のろくろ(画像出典:木地屋民芸品展示資料館、しが県博協

日本の歴史では、木のおわんなどを使って食事をしていた時代がたいへん長かったので、木地師の作る食器は毎日の生活になくてはならないものでした。鳥取の山の中にも、木地師の人たちが住んでいた場所がたくさん残っています。

ところで、木地師の人たちは「おに」や「やまんば」に出会わなかったのでしょうか。「きじ師」は、住んでいる場所で、ちゃんと「山の神」をお祭りしていたので、「おに」たちは悪いことができなかったのかもしれませんね。


山の神のまつり

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山本福壽

智頭の山人塾 塾長。鳥取大学乾燥地研究センター・特任教授。農学博士。2016 年より鳥取県智頭町に移住し、塾長に就任。

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