Outdoor Innovation Summit 2018に参加してきました

スタッフの和多瀬です。

昨年、2018年12月12日に東京国際フォーラム(東京・有楽町)でOutdoor Innovation Summit 2018が開催されました。


画像出典:PR TIMES

キャンプ場情報サイト「なっぷ」やアウトドア総合情報サイト「ソトシル」を運営する株式会社スペースキーが主催する、キャンプ場および周辺の自然環境を活用した事業の発展、それを活用した地域振興、インバウンド/アウトバウンド併せてアウトドア人口を増やしていくか、それに伴って生じるであろう環境保全問題をどう解決していくかといったテーマのイベントです。

プログラムをご紹介します。

  1. IT業界の私から見たアウトドアの未来
    ヤフー株式会社代表取締役社長 宮坂学
  2. アウトドアを軸として訪日外国人を受け入れるには
    小西美術工藝株式会社 デービッド・アトキンソン
  3. アメリカOIAの活動とこれまでの変遷
    OIA Senior Director Beth Jensen
  4. 立山黒部が目指す世界的なアウトドアフィールドへの歩み
    立山黒部貫光株式会社 永崎泰雄
  5. 地球規模の課題を解決する可能性を秘めた、新世代の持続可能な 基幹素材
    株式会社ゴールドウィン 渡辺貴生
  6. 海洋ゴミとマイクロプラスチック問題
    大阪商業大学公共学部 原田禎夫・CAJ
    パタゴニア日本支社 篠健司
  7. 森林のアウトドア活用の可能性と課題
    森林総合研究所 平野悠一郎
  8. 世界に誇る日本各地域の自然資源の活用と実現に向けて
    三重県知事 鈴木英敬
    三条市長 國定勇人
    スポーツ庁参事官 増井国光

和多瀬が運営するブログが、メディアとして当イベントに招待され、参加してきました。事情により、左記プログラムの3〜7のみの聴講となりました。その中で私が特に関心を持ってきいた5と6を中心に、共有したいと思います。

3. アメリカOIAの活動とこれまでの変遷
/ OIA Senior Director Ms.Beth Jensen

アウトドア先進国であるアメリカの業界団体「OUTDOOR INDUSTRY ASSOCIATION(OIA)」にてアウトドアビジネスの持続可能性を研究するサスティナビリティワーキンググループを率いるベス・ジェンセン氏が、約30年の活動内容や歴史について語りました。アウトドアビジネスの発展や今後の可能性が具体的な事例と共に紹介されました。特に行政の近視眼的な決定によって、大規模なアウトドアイベントが他地域での開催となり、大きな税収を失った話は印象的でした。

4. 立山黒部が目指す世界的なアウトドアフィールドへの歩み
/ 立山黒部貫光株式会社 永崎泰雄氏

立山黒部貫光株式会社は、中部山岳国立公園内にて立山黒部アルペンルートを運営する、バス、トロリーバス、ロープウェイ、ケーブルカーなどの運輸事業、ホテル事業、構内販売事業を展開されている会社です。団体観光から個人や少数グループの多様な形態の旅行を受け入れ、観るだけの観光からフィールドを活用した楽しむ観光地への変革、「世界に類を見ない山岳リゾートエリア」を目指しているとのこと。多くの観光客が訪れても、いかに環境への影響を低減するか、ビジネスを通じて環境保全を実現するかといった話が中心でした。

5. 地球規模の課題を解決する可能性を秘めた、新世代の持続可能な基幹素材
/ 株式会社ゴールドウィン 渡辺貴生氏

アウトドアアパレルメーカーのTHE NORTH FACEが、Spiber社と共同で数年前から取り組んでいる、人工合成クモ糸繊維「QMONOS®」についての共有がありました。


人工合成クモ糸繊維「QMONOS®」(画像出典:Spiber社HP)

古来から人間が、食用はもちろん、衣類をはじめ自分たちが生きるための道具をつくるために活用してきた動物。衣類としての活用にフォーカスしてみると、利用している羽毛や毛皮、革などは、見た目は違えどすべてタンパク質です。タンパク質は20種類のアミノ酸が組み合わさってできたもの。では、タンパク質を原料とした糸を大量に低コストで生産する技術ができれば、アミノ酸の組み合わせを変えることで、これまで自然に頼っていた原料を自ら生み出すことができるのではないか?

この考え自体は過去、多くの企業や研究者が取り組んできたアイディアですが、これまで誰も実現できていませんでした。そんななか、日本のベンチャー企業であるSpiber社が「人工合成クモ糸繊維「QMONOS®」」によって世界に先駆けて実用化に成功しました。

「人口クモ糸」による衣類のプロトタイプ「ムーンパーカ」は、すでに2016年に生まれています。


人工クモ糸でつくられた世界で初めての製品「MOON PARK」 画像出典:GOLDWIN

この「人工クモ糸」の量産化、低コスト化が実現すれば、原料の石油依存度を大幅に下げることが可能です。今後、世界の人口が爆発的に増加していくなかで、化石燃料への依存度を下げ、持続可能性のある素材で衣類をつくることができれば、世界規模の問題の一つが解決するかも知れません。

しかしながら、現段階でこの製品は販売されていませんし、人工クモ糸の大量生産技術の確立と大量流通のための低コスト化はまだ実現していません。

とはいえ、タイに大型の工場を建設するなど、Spiber社は着実に歩みを進めています。

THE NORTH FACEのようなアウトドア関連企業にように、CSR活動だけではない、自社の製品やサービスを通じた環境問題の解決への直接的アプローチをとる企業は増加傾向にあるようです。

6. 海洋ゴミとマイクロプラスチック問題
/ 大阪商業大学公共学部 原田禎夫氏・CAJ・パタゴニア日本支社 篠健司氏

海洋ゴミとマイクロプラスチックについてのプレゼンテーション。

マイクロプラスチックの海洋、資源、生物汚染については最近数多くのメディアに取り上げられているので詳細は割愛しますが、衝撃的な写真を1枚、共有します。


プレゼンテーションにも使用されていた動画のいち場面。ミッドウェー島のアホウドリの死骸。プラスチックが体内に充満している。画像出典:Midway Island -Unbelievable video about albatross on Midway Island and the plastic we consume.

ミッドウェー島のアホウドリの死骸には、ペットボトルのフタなど、プラスチックが体内に充満しているそうです。

このレポートでは、同プレゼンテーションの中で語られた中から、特に繊維状のマイクロプラスチックについて共有したいと思います。
マイクロプラスチックに関する問題は最近、ニュースなどで耳にします。使い捨てプラスチックの製品を使用禁止にする州や地域が生まれるなど関心が高まっているようです。

個人でできることとしては、ストローなど使い捨てのプラスチック製品を買わない、使わない、ポイ捨てしないなどが肝要とされていますが、繊維状のマイクロプラスチックは、化繊の衣類を洗濯することによって流出し、下水路などを通って浄水場へ到達し、そこから河川や海へと流れ出してしまいます。

つまり、ふつうに暮らしているだけで、マイクロプラスチックによって環境を汚染してしまうわけです。

このテーマについてプレゼンテーションされたのは、CAJ(Conservation Alliance Japan)の幹事であり、パタゴニア日本法人のブランド・レスポンシビリティ・マネージャーを勤める篠 健司さん。前者は環境保全を目的とした組織ですし、後者は環境や動物福祉等にも問題意識を持つ会社で、氏のポジションは環境に対する同社の中核に位置するものです。

パタゴニアも世界中で30年以上、繊維状のマイクロプラスチックを生じさせるフリースを大量に販売してきました。彼らの立場上、何らかのアクションと具体的な結果を示したいところだったと思いますが、現時点では現状把握と問題解決に動き始めた、といったところでした。

他社からはマイクロプラスチックが出ないフリースもすでに開発されていますし、この問題に対するパタゴニアの新しい製品、また既存の製品に対する何らかの意思表明や一般消費者がとれる対処方法などが発表されることを少し期待していたので、個人的には物足りなく、少し残念でした。

7. 森林のアウトドア活用の可能性と課題
/ 森林総合研究所 平野悠一郎氏

森林総合研究所の平野氏は、国内外の森林政策や制度を研究しながら、森とスポーツの融合・活用について注目し提言されています。森林のアウトドア活用の可能性について、国内外の事例を交えつつ、地域振興の観点に重点を置いたプレゼンテーションでした。

国や地域が違えど、問題になるのは主に「環境保全」「地域住民の理解と参加」の2点。これらを解決するのは、業界団体が主体となった法整備(への働きかけ)と、利害関係者の役割や責任を明確にするフレームワークとのこと。ただし、これによって問題が解決しても時間がたてば問題が再燃することもあったりと、スポーツによる森の活用と地域振興を持続的、安定的、発展的に実行していくのは、まだまだ経験と知見、時間が必要でありそうです。

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