オヒョウの巨木

2021年となり、世界情勢は新型コロナウィルスの感染増大で混沌としています。

日本は現在、第3波の感染が増え続けており、1月13日の患者の累計は298,233人、現在の患者数は66,060人、死者は4,178人に達しています。

米ジョンズ・ホプキンス大の集計では、日本時間12日午後7時30分時点で世界の感染者数は9,096万人、死者数は194.7万人。最多の米国の感染者数は2,261.8万人、死者の総数は30万人を越え、連日、20万人のペースで感染者が増加しています。米国では加えて、トランプ支持者たちの議会襲撃が大きなニュースになっています。

感染者はインドで1,048万人、ブラジル813万人と続き、変異種が猛威をふるう英国でも5~6万人のペースで感染が拡大しています。欧米などではワクチン接種が始まっていますが、感染の収束の兆しは依然として見えていません(*1)。

オヒョウ

藪から棒ですが、オヒョウというユニークな葉の形をした樹木をご存知でしょうか。


オヒョウの葉

オヒョウはニレ科ニレ属の落葉性の高木で、日本(北海道-九州)、朝鮮、中国東北部、東シベリアの山地に広く分布しています。

ざらざらした手触りの葉の形は広倒卵型なのですが、先端が裂けたような構造をしており、同じ形の葉は見当たりません。また葉の基部の形はほかのニレと同じように左右非対称です。

日本では特に北海道に多く生育しており、私も北海道の樹木というイメージがありました。

学名はUlmus laciniata、漢字は於瓢という文字が当てられており、別名アツシノキなどと呼ばれています。アツシもオヒョウもアイヌ語に由来します。この樹種は内樹皮の繊維(靭皮繊維)が長く強靭で、これを取り出してアイヌ民族のアットゥシ(厚司)という布や衣類として利用されてきました。


アイヌ民族のアットゥシ織

オヒョウの衣類は、シナノキ(Tilia japonica)で作った衣類よりも上質であったようです。

オヒョウは渓畔林を構成する樹種で、鳥取県でも山地の渓流沿いをよく探せば見つけることができます。といっても、北海道のように個体数は多くないので、懸命に探すことが必要でしょう。

さてこれからが本題です。

2020年7月31日、智頭町のアルピニスト、加藤修さんのご案内で芦津のブナ林を探訪したあと、芦津渓谷の本流から枝分かれした細い渓流を下ってきたそのときでした。

突然眼前に、トチノキなど他の大木を圧する広葉樹が目に飛び込んできたのです。目を凝らして高い位置に展開する葉を観察すると、なんと、予想もしなかったオヒョウでした。


芦津のオヒョウ

8月15日、鳥取大学の友人たちと計測したところ、樹高31.5m、胸高周囲5.46m(直径1.74m)で、その巨大さに仰天してしまいました。


胸高周囲5.46m、樹高31.5m

さっそく、人脈を駆使して専門家にたずねましたら、「新潟県に直径1.4mほどの日本最大級とされる巨木が存在する」、とのことでした。ということは、芦津渓谷の巨木は、日本最大のオヒョウかもしれませんね。北海道にもこれほどの巨木はないようで、まさに大発見、といったところです。

この個体は、ヒコバエから立ち上がった細い幹の樹皮がシカにむしり取られていましたが、本体は健全で多くの葉が着生していました。

芦津渓谷では、それまでダムの近くで直径20㎝程度のオヒョウを数本観察していますが、どこでもある樹種ではありません。この細い渓谷でも、この巨木以外、まったくオヒョウは若木すらも確認できませんでした。

樹齢はまったく推測の域を出ませんが、2~300年ぐらいは経っているでしょう。どのような偶然でこの地にオヒョウが芽生え、この大きさにまで成長したのか、まったく興味は尽きません。

この樹木は芦津財産区が所有しており、正確な位置はこの樹木の保護のために公表できないのですが、個人的に観察したいという人からのご連絡があれば、ご案内することもやぶさかではありません。

新型コロナ禍の中、ちょっといい話としてコラムでお伝えしたしだいです。

*1 引用:nippon.com 「世界の感染者9625万人 : 全体の25%が米国に集中【新型コロナの国別感染者数】

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